上から18年式、30年式騎兵、30年式
ドラマ「坂の上の雲」で小道具として使われたものをお借りした。
木材と金属で作られたもの。
三丁持って帰ったが、とんでもなく重い。
お借りした製作所にて、横に長いアタッシュケースに銃をいれ、
担当さんと二人で近くの駅まで歩いたのだが、気分はゴルゴ13どころじゃなかった。
ヒーコラヒーコラバヒンバヒンと茶魔語を言いながら歩いた。
一番下のは「ゴールデンカムイ」主人公・杉元佐一が持っている銃。実物は4kgらしい。
これはボルトが稼動する程度の鉄の塊なので実物よりは重いはずだ。
構えているところを撮影してもらうが、重くて腕が下がってくる。
当時の日本人の平均身長は150センチ程度。
こんなものを持って走り回っていたのかと思うと、当時の人間はタフだったんだなあと感慨にふける。
自分の曽祖父は屯田兵だ。
恥ずかしながらつい何年か前まで曽祖父のことについてあまり知っておらず、
新連載の題材を探していたときに曽祖父を思い出し、父に詳しいことを聞いてみた。
曽祖父は第七師団、歩兵27連隊乗馬隊に所属していた。
いわゆる「北鎮部隊」だ。
作中では悪役にされているが、自分は曽祖父が北鎮部隊だったことに誇りを感じている。
曽祖父は一等卒として 日露戦争に出征しており、
激戦地であった旅順攻囲戦の二百三高地、その後の 奉天会戦に参加していた。
疎いひとに簡単に説明するなら、数々の映画、ドラマ、小説にもなった有名な戦いで
とにかくムッチャクチャ死んだ。
ある時、曽祖父のいた500名程度の大隊が2,000人のロシア兵に包囲された。
絶体絶命の状況で上官は、この包囲網を突破し味方の援軍を呼ぶ任務を、ある兵士に命じた。
それが曽祖父だった。
任務にはもう一名選ばれ、曽祖父は馬に乗り、ロシア兵の包囲網の中を全力疾走する。
鉄砲の弾が曽祖父の体をかすめ、弾が耳元を音を立てて何発も通り抜ける音が聞こえた。
このとき不思議と二人にも、乗っているそれぞれの馬にも弾は当たらなかったそうだ。
任務を命じた上官も「二人とも助からんだろうなぁ」と半ばあきらめていたらしい。
しかし曽祖父たちは無傷で包囲網を突破。
4000人の援軍を連れて戻ってきた。
それを見たロシア兵は蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったそうだ。
部隊に戻ったとき大隊長が曽祖父を抱きかかえて迎えてくれ、大隊は一人の死者も出さずに済んだ。
その功績が認められ、曽祖父は二階級特進。金鵄勲章を賜ることとなり、死ぬまで結構な額の年金を貰っていた。
曽祖父の名前は杉本佐一だ。
ドラマ「坂の上の雲」で小道具として使われたものをお借りした。
木材と金属で作られたもの。
三丁持って帰ったが、とんでもなく重い。
お借りした製作所にて、横に長いアタッシュケースに銃をいれ、
担当さんと二人で近くの駅まで歩いたのだが、気分はゴルゴ13どころじゃなかった。
ヒーコラヒーコラバヒンバヒンと茶魔語を言いながら歩いた。
一番下のは「ゴールデンカムイ」主人公・杉元佐一が持っている銃。実物は4kgらしい。
これはボルトが稼動する程度の鉄の塊なので実物よりは重いはずだ。
構えているところを撮影してもらうが、重くて腕が下がってくる。
当時の日本人の平均身長は150センチ程度。
こんなものを持って走り回っていたのかと思うと、当時の人間はタフだったんだなあと感慨にふける。
自分の曽祖父は屯田兵だ。
恥ずかしながらつい何年か前まで曽祖父のことについてあまり知っておらず、
新連載の題材を探していたときに曽祖父を思い出し、父に詳しいことを聞いてみた。
曽祖父は第七師団、歩兵27連隊乗馬隊に所属していた。
いわゆる「北鎮部隊」だ。
作中では悪役にされているが、自分は曽祖父が北鎮部隊だったことに誇りを感じている。
曽祖父は一等卒として 日露戦争に出征しており、
激戦地であった旅順攻囲戦の二百三高地、その後の 奉天会戦に参加していた。
疎いひとに簡単に説明するなら、数々の映画、ドラマ、小説にもなった有名な戦いで
とにかくムッチャクチャ死んだ。
ある時、曽祖父のいた500名程度の大隊が2,000人のロシア兵に包囲された。
絶体絶命の状況で上官は、この包囲網を突破し味方の援軍を呼ぶ任務を、ある兵士に命じた。
それが曽祖父だった。
任務にはもう一名選ばれ、曽祖父は馬に乗り、ロシア兵の包囲網の中を全力疾走する。
鉄砲の弾が曽祖父の体をかすめ、弾が耳元を音を立てて何発も通り抜ける音が聞こえた。
このとき不思議と二人にも、乗っているそれぞれの馬にも弾は当たらなかったそうだ。
任務を命じた上官も「二人とも助からんだろうなぁ」と半ばあきらめていたらしい。
しかし曽祖父たちは無傷で包囲網を突破。
4000人の援軍を連れて戻ってきた。
それを見たロシア兵は蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったそうだ。
部隊に戻ったとき大隊長が曽祖父を抱きかかえて迎えてくれ、大隊は一人の死者も出さずに済んだ。
その功績が認められ、曽祖父は二階級特進。金鵄勲章を賜ることとなり、死ぬまで結構な額の年金を貰っていた。
曽祖父の名前は杉本佐一だ。
右から二行目に「上等兵 杉本佐一」とある。
その後、60代まで生きた曽祖父は第二次世界大戦中に自宅で亡くなった。結核だった。
ちなみにゴールデンカムイの主人公は名前を借りただけに過ぎない。
自分の曽祖父を描いてるつもりは一切無い。まったくの別人と考えている。
曽祖父を「英雄だ」なんて自慢するつもりはさらさら無い。
英雄と呼ばれるにふさわしい人物に比べれば、それはおこがましい。
ただ自分と血がつながった身内で、今の自分よりもっともっと若い時分の曽祖父が遠い異国の地で
血みどろの戦争を生き抜き、500名の命を救い、名誉とマネーを掴んだという話に、胸が熱くなる。
二十代だったときの自分、何者でもなかった自分の惨めさと比べてしまう。
自分の人生でこれまでも、これからもそんな経験ができるイベントはおそらく無い。戦争なんて無いに越したことはないんだが。
ロシア兵の銃弾が一発でも曽祖父に当たっていれば自分は今ここに存在していなかったのかと思うと
もっと真摯に生きようとも考える。
映画の小道具である、ひどく重たい三十年式歩兵銃を持ったとき、
ほんのわずかだけ曽祖父と同じ思いを感じられた気がした。
曽祖父も「この鉄砲、重てえなぁ」って思ったはずだ。
ちなみにゴールデンカムイの主人公は名前を借りただけに過ぎない。
自分の曽祖父を描いてるつもりは一切無い。まったくの別人と考えている。
曽祖父を「英雄だ」なんて自慢するつもりはさらさら無い。
英雄と呼ばれるにふさわしい人物に比べれば、それはおこがましい。
ただ自分と血がつながった身内で、今の自分よりもっともっと若い時分の曽祖父が遠い異国の地で
血みどろの戦争を生き抜き、500名の命を救い、名誉とマネーを掴んだという話に、胸が熱くなる。
二十代だったときの自分、何者でもなかった自分の惨めさと比べてしまう。
自分の人生でこれまでも、これからもそんな経験ができるイベントはおそらく無い。戦争なんて無いに越したことはないんだが。
ロシア兵の銃弾が一発でも曽祖父に当たっていれば自分は今ここに存在していなかったのかと思うと
もっと真摯に生きようとも考える。
映画の小道具である、ひどく重たい三十年式歩兵銃を持ったとき、
ほんのわずかだけ曽祖父と同じ思いを感じられた気がした。
曽祖父も「この鉄砲、重てえなぁ」って思ったはずだ。